大谷翔平というスターを生み出した人間像 ①

今や“日本の宝”ではなく、“世界の宝”となった大谷翔平選手。 日本人が世界中の野球のつわもの達に全く引けをとらない姿は、輝かしくもあり、私たちの誇りであります。

一方で、スターの階段を着実に駆け上ってきた大谷選手に対し、多くの人たちは、彼のみに与えられた天賦の才だからと、その理由をあえて追求しようとはしないかもしれません。

身体的な能力、特に持久的能力や筋力といった能力には、遺伝的要因が関与していることが明らかなのは周知の事実です。

しかし、生まれもった身体的な能力だけで、世界トップクラスのアスリート、野球選手になれるわけではないのもまた事実です。

では、あらためて大谷翔平というスターがどのように作られてきたのか、本人の人間像からヒントになることはないのかどうか、見ていきたいと思います。

客観的に自分を見れるような環境を作る

大谷省へ選手が高校1年生のとき、8球団からドラフト1位指名されるという「夢」を達成するために、必要な要素を書き出していく「マンダラチャート」を作成したことはよく知られています。

このシートのすごいところは、即座に自分を客観的に見る“メタ認知”ができることで、人間は感情の動物であるため、毎日心が揺れ動くのが普通ですが、このシートを常に見ることによって、惑わされることなく自分のなすべきことに立ち戻れる効果があるようです。

大谷選手のすごいところは、自分の夢をかなえるためにはどうするべきかを客観視し、それを現実化するために不断の努力ができる環境にあえて身を置けるところかもしれません。

卓越した才能?

「1つ教えたら、5つくらいを同時に理解する子でした」

そう振り返るのは、大谷選手が小5から中1まで所属した水沢リトルリーグの監督で、家族ぐるみのつきあいもある佐々木一夫さんです。

佐々木さんにとって小学生の大谷少年との出会いは衝撃的なものだったようです。

「最初の挨拶のとき、翔平くんから『野球を教えてください』と言われたんです。 『守備を教えてください』『どう打てばいいですか』と聞く子は多いけど、野球そのものを教えてくださいと言われたのは初めて。小学生でこんなことを言う子がいるのかと衝撃を受けました」

つまり、野球を始める時点で、ゴールを想定し、そこに近づくためにはどうすればいいかを既に少年ながら大谷選手は考えていたということになります。

しかも、目の前に現れるひとつひとつの壁をその場ごとに越えていくという考えではなく、大局を見てゴールを設定し、そこから逆算して筋道を立てる。 進むべく道に立ちふさがる課題は意味を成すものだから、ひとつひとつ越えていけばよい。 そういった考え方ができるのも、卓越した才能のひとつではないでしょうか。

ひたむきな姿勢

「翔平くんは相手チームとどんなに実力の差があっても絶対に手を抜かず、とにかく全力で疲れ切るまでプレーしていました。だから大会や練習試合の帰りのバスでチームメートが盛り上がっているときも、力を出し切った翔平くんだけは寝ていることが多かった。野球に対して、ひたすら貪欲でしたね」
佐々木さんはこう言っています。

「野球が大好き」、そして「野球がもっとうまくなりたい」。
だから、野球をやるときは妥協することなく、少しも力を抜かず、吸収できることはすべて吸収していきたいと考えていたのでしょう。

ひとつのプレーに集中し、全力を出し切るまでやりきるというひたむきさを小学生から持ち合わせていたことは驚きであり、だからこそ、今でも確実に進歩し続けられるのかもしれません。

気遣いとチームワーク

大谷選手がリトルリーグ時代、キャッチャーとしてバッテリーを組んでいたのが、佐々木監督の息子である佐々木遼輔さんです。

「マウンドに立って第一球を投げるとき、手にふうっと息を吹きかけますが、あれは昔からやっていたので、懐かしいですね。 リトルリーグの頃は野球がうまいのはもちろんだけれど、チームメートへの声かけが抜群に上手だった。 例えば誰かがエラーしたら、『ドンマイ』って励ますか、それともいじって笑いに変えるか、相手の性格に応じて対応を変えていました。 野球がうまいことにおごることなく、チームの盛り上げ方を誰よりもわかっていました」

大谷選手を当時一番近くで見ていた人間が、こう言っています。

エラーをしても、三振をしても、仲間をけなすことは決してなく、責任を他人に転嫁することもなかったようです。

常に仲間を盛り上げ、勇気づけ、そして自分が全力でカバーをする。

そういう気遣いのできる大谷選手だからこそ、メジャーでも、チームメート全員から愛されるキャラクターなのでしょう。

楽しいことよりも正しいことを


(参照:https://xn--pss26jos8anmk.xyz/)

大谷選手が野球のために24時間を費やすことができるのは、高校での3年間に彼が教え込まれた大切な考え方があるからだといいます。

「そうですね、迷ったら正しい方向を選ぼうとするようになりました。選ぶのと選ぼうとするのとでは違うと思いますけど、僕は選ぼうとします。

今、毎日毎日、野球ばっかりやっていて楽しいんですけど、でも、ときにはイヤだけどやらなきゃいけないなと思うこともあるし、本当は練習したくないときもあります。

そりゃ、それで打てるならそうですよ。毎日、家でゲームだけして、試合に行ったら打てるというなら、それでいいじゃないですか。

それがおもしろいかもしれないし、おもしろくないかもしれない。
そんなふうになったことがないからわからないし、僕はやらないと打てないので、練習、やりますけどね(笑)」

大谷選手にとって、やりたくないことでも、成長するためにやらなければならないのであるなら、それに集中して取り組みます。

楽しいことよりも正しいことをやろうと考えて行動した結果、ひらめきが成長をもたらしたことが何度もあるようで、その喜びを大谷選手は味わってきたからこそ、楽しいことを犠牲にできるようです。

彼は分かっているのです。何が正しいのかを考えて行動することが自分にとってどれだけ大切かを。

先入観は可能を不可能にする!


(参照:https://baseballking.jp/)

大谷選手は高校生のときに、「先入観は可能を不可能にする!」と言っていたようです。 そして今、彼にその頃の発言をどう思うか聞いたところ、このように答えています。

「そこは今も、まったくその通りじゃないですか、という感じです。 僕がプロで二つやっていこうと決めたときも、いずれはこっち(メジャー)に来たいと思っていて、その日が来たら、たぶんピッチャーをやるんだろうなと考えていました。でも、それさえもそうじゃなかった。

自分がどうなるのか、どこまで行けるのかということは、自分でもわからないんです。予想以上にバッティングもよくなってくれたし、自分でもわからない可能性がいっぱいあったなと思います。だから自分ではできそうもないなと思ったことを、やるかやらないか。可能性を潰すか潰さないか。全部が全部をやったらいいかというわけじゃないと思いますけど、やることを止めなくてもいいなとは思います。ホント、何がどう転ぶかというのはわかりませんからね」

自分自身でさえ「メジャーではピッチャーをやるんだろう」とはじめは思っていた大谷選手。しかし、バッターとしての可能性を捨てなかったことで、彼は二刀流としてメジャーの舞台で大活躍しました。そして、2021年のシーズンではMVPを獲得したのです。

数字だけを見れば投打それぞれにおいて、大谷選手を上回る選手は他にいます。それにもかかわらず、大谷選手が満票でMVPを獲得したのはどうしてなのでしょうか。

それは、大谷選手が言っていた「先入観は可能を不可能にする」という言葉そのものから来ているのです。メジャーで二刀流として活躍することは不可能だという先入観を誰もが持っていました。だからこそ、大谷選手はメジャーの価値観を変え、数字以上のインパクトを世界中に与えたのです。

今年のメジャーのオールスターゲームでは“1番ピッチャー、大谷"、つまりピッチャーとバッターの大谷選手が二人揃って同じ試合に出るという、今までにはあり得ないことが現実となりました。

大谷がメジャー移籍を希望したとき、多くのファンたちは、メジャーの球団が二刀流でオファーを出すなんてあり得ないと思いましたが、現実は、「二刀流」を受け入れようといったチームはいくつもありました。

そのことについて大谷選手はこうコメントしています。

「それは嬉しかったですね。僕が日本のプロ野球に入ったとき、二つなんてできるはずがないのに、という人のほうが多かった。少なくともそういうところは変えられたのかなと思うので、二つやってきてよかったなと思いました。

この先は、僕がダメだったとしても、次の子どもが出てきてくれればそれでいいんです。一人失敗したからといって終わりだとは思いません」

これからも、大谷選手は何度も体現してくれるかもしれません。
「先入観をもたないことが、不可能だと思われることを可能にする」ということを。

自分が「何を残せたのか」が指標

「僕、二つやると決めたときから数字には本当にこだわっていないんです。
一年一年の結果は自分が何を残せたのかという指標として気にします。
でも現役を終わるまでにどのくらい打ちたいとか、いくつ勝ちたいとか、そういう気持ちはまったくありません。現役でいられるうちにフィジカルも技術も、獲得し得るものは全部、獲得して終えたい。そこだけなんです。

でっかいホームランを打ちたい、誰よりも速い球を投げたい。
そう思って練習して、それができたときの嬉しい感じ……僕は今もその感覚を求めて野球をやっています」
(参照:https://www.news-postseven.com/archives/20210720_1677050.html)

大谷選手にとっては、数字がモチベーションではないようです。彼が野球をやる理由、それはやはり今以上にうまくなりたい、その一点でしかないのでしょう。

50本のホームランを打つよりも、どこまでも飛んでいくどでかいホームランを打ちたい。
20勝するよりも誰よりも速い170キロを超えるストレートを投げたい。

そんな大谷選手は、永遠の野球小僧なのかもしれません。

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。