右打者と左打者、どっちが有利?(1)~右利きと左利き~

子供が園児や小学生になって野球に興味を持ちはじめた時、右バッターの方がいいのか、左バッターの方がいいのか、子供にアドバイスしたいと思われる方もいるのではないでしょうか。

それでは、実際に右打者と左打者のメリットとデメリットを検証したいと思います。

日本人の右利きと左利きの割合

日本の人口全体で見ると、左利きの割合は約11%と言われています。 世界の人口全体では、左利きの割合が約10%と言われていますので、日本人の左利きの割合は世界の割合よりも若干高いのです。

では、なぜ右利きと左利きが生じるのでしょうか? 利き手が定まる理由として、いくつか説がありますが、実際のところ、確実なことは明らかになっていません。

ある説によると、人間は左側に心臓があるため、急所を守りながら右手で戦う必要があったから右利きが増えたとのこと。

また、すでに石器時代には右利きの数が多く、右手を使う道具が多く作られてきたから右利きが増えたという環境説もあります。

さらに、人間は「言葉」によるコミュニケーションをとるようになり、言語脳である左脳が発達することで、左脳が動きをコントロールする右手をよく使うようになったという説もあります。

しかし、左利きの脳内科医、医学博士である加藤俊徳先生によると、「右利き」「左利き」を決める要因として、遺伝子の影響が少なからずあると考えられています。

子供が左利きになる確率は以下の通りです。

両親が共に右利きの場合 9.5%
右利きと左利きの親の組み合 19.5%
親が二人とも左利きの場合 26.1%
McManus, I. C. & Bryden, M. P. 1992*の統計結果から)

ただし、利き手を決定づける遺伝子はまだ見つかっていないようです。 左利きの人だけに見られる遺伝子のグループがあるのは事実なようですが、子どもの頃に左利きだったのに、右利きに矯正した人もいます。 つまり、現段階では「利き手」を決めるのは、遺伝の可能性に加え、生まれたあとの環境の影響があると考えられているのです。

(参照:https://diamond.jp/articles/-/282959

そもそも、日本では、第二次世界大戦前は左利きを右利きに変える文化が根づいていました。そのため、左利きの割合は現在よりもずっと低く、約6.5%だったと言われています。

この背景には、箸文化の日本では、左利きの人と並んで座ったときに箸を持つ手がぶつかってしまうことから、それを避けるために右利きに直してきたと言われています。

ちなみに、現在の日本人の左利きの割合を男女別に比較すると、男性が約3.6%で、女性が約2.7%となっており、男性のほうが多い傾向にあります。

この差には諸説ありますが、ホルモンバランスの違いが一因だと考えられています。 赤ちゃんは母親の胎内にいる間に、テストステロンという男性ホルモンを分泌するのですが、これは右脳の発達を促すホルモンで、右脳と体の左部分が密接に関係しているため、テストステロンを多く分泌する男性のほうが左利きになりやすいと言われているのです。

世界の右利きと左利きの割合

世界の左利きの割合について、国別に見てみましょう。

アメリカ

左利きの割合は約1.8%で世界人口における割合よりもかなり低いのが現状です。一方で、両利きが約28%もいます。

アメリカでは左利きを無理やり右利きに矯正することは子供の成長において心理的ストレスなどの悪影響を及ぼすと考えられていて、動作によって利き手を分ける「クロスドミナンス」という考え方で両利きになっている人が多いといわれています。

イタリア

左利きの割合は約5.8%で、アメリカほどではありませんが、世界人口における割合よりもかなり低いようです。 また、両利きはアメリカよりも多く、約30%となっています。カトリックでは左利きは禁忌とされていて、右利きや両利きに変える人が多いとされています。

台湾

左利きの割合は約3%で、この少ない理由は、戦前の日本のように左利きは無理にでも右利きに変える文化があるからだと言われています。

香港

左利きの割合は約9.7%で、世界人口における割合に近くなっています。 香港はイギリス領であったため、左利きに関しても欧米の思想が根づいており、無理に利き手を変えようとしないからだと言われています。

なお、左利きの比率が高い国、TOP3は1位がオランダで約15.7%、2位がニュージーランドで約15.5%、3位がノルウェーで15.0%となっています。

スポーツにおいては左利きが有利だと言われており、テニスや卓球などでも左利きは有利だとされています。 特にフェンシングではプロ選手のうちの約半数、野球でもトップ選手の約半数が左利きだというデータがあります。 これは、左利きのほうが不意をつく攻撃に有利だから、相手の一瞬の判断の中に混乱をもたらすことができるからだと言われており、反応速度が勝敗を左右する競技においては、左利きは重要な要素となると考えられています。

日本における右打者と左打者の割合は?

野球選手全体の割合を統計として取ることは非常に困難であるため、プロ野球選手(支配下登録者)を例にとり、その左打者の割合をみていくことにしましょう。

引用:『球団別インデックス | NPB.jp 日本野球機構(https://npb.jp/teams/)』

2021年8月に支配下登録されている選手をみると、右打者と左打者の割合は、セリーグで約16%、パリーグで約10%、右打者が多いようです。

つまり、右打者が約55~58%、左打者が約45%~42%という数字となっています。

なお、歴史的な割合の変化でいうと、1950年から2017年までのNPBでの打席数を比較すると、左打席の割合は右上がり傾向で、1950年に約13%だったのに対して、1998年に約40%を超え、近年も約40%から45%という高い数字になっています。

それに対し、MLB(アメリカ)ではどうなっているのかといいますと、1950年から今まで、左打者の割合が40%を超えたことは1度もなく現在も約30%程度です。 その反面、スイッチヒッターがNPBと比べて非常に多く、1977年以降は常に約10%を超え、近年も約12~15%です。 それに対し、NPBではスイッチヒッターが約3~5%しかいません。

(参照:https://note.com/aozora_data/n/ne652416e613d
(参照:https://aprilaloisio.com/archives/3518

左打者のメリットとデメリット

左打者のメリット

一塁到達タイムが早い

バッターボックスから一塁までの距離が近いことと、スイング後の体勢からスムーズに一塁に向かって踏み出すことができます。 右打者だと、スイング後に体を一塁に向けて戻す動作が必要となり、かつ、一塁まで一歩分多めにかかります。

一般的に「右投手」と相性が良い

右投手のモーションとボールの出どころが右打席に比べて見やすいのです。特にアンダースローやサイドスローなど、変則的なピッチャーと対戦すると優位性が現れます。

なお、2020年のデータでは、MLBにおいて登板した右投手が541人、左投手が195人で、割合にすると右が約74%で、左が約26%です。(2019年もほぼ同じ)

NLB(日本のプロ野球)では、2019年のデータによると、右投手が約71%で、左投手が約29%です。 そのため、圧倒的に右投手が多く、左打者の方が有利だと言われています。

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